「完成」のないデザインとの付き合い方

仕事をする上では区切りとしての「完成」を目指してデザインを進めていく訳ですが、Webサイトやアプリはその性質上、デザイナーの手元だけで厳密な意味での「完成」を迎えることは少ないと言えます。

デザインが完成しない理由

Webサイトやアプリにおいては、デザインの対象となる「コンテンツ」は更新されていく事が前提となっている事が多く、リリース前の「完成」は「その時点でのコンテンツにおいての、良いと思われる見せ方の一つ」に過ぎないからです。 また、管理者のみならず利用者によってコンテンツの作成・編集が行われるサービスも多く、利用者の反応を見ながら「何処に力を入れるべきか」と方向性を探る事も少なくないとなれば、デザインの「完成」なんて物は存在しないのかもしれません。 となると、デザイナーは日々の制作において、何を持ってして「完成」の境界線を引いていけば良いのでしょうか。

少なくとも、自信が無くなるまでは作りこむ

「作りこむ」のに自信が無くなるというのはおかしな話だと思われるかもしれません。しかし、自信が無くなるまで作りこみ、課題を把握した上でのデザインを作ることができた時こそ、ひとまずの「完成」と言えるのではないかと思います。 そもそも、デザイン対象のコンテンツを「どのように見てもらうべきか・使ってもらうべきか」という問題に対する自分なりの答えがデザインとなる訳ですが、想定されるありとあらゆる環境・人・使い方・好みに対応したデザインが存在するとは考えにくいので、デザイナー自身が「完璧!完成!」と思っている内は、まだまだ見えてない物が多い状態なのではないでしょうか。(対象ユーザーを絞って考えた場合でも) したがって、どんな問題が起こりうるのか、その内どんなケースであれば対応できるのか、しっかりと「できないこと」も把握できた時にこそ、きちんと全体を把握した上での最善と思われるデザインが出来るのではないかと。(=区切りとしての「完成」) …と、下記の本で紹介されている「分かっていると思っている時ほどわかっていない」という例を読んでいて思いました。
手持ちの情報の量や質は主観的な自信とは無関係である。自信を裏付けるのは、筋の通った説明がつくかどうかであり、ほとんど何も見ていなくても、もっともらしい説明ができれば人々は自信たっぷりになる。こうしたわけで、判断に必須の情報が欠けていても、それに気づかない例があとを絶たない。 『ファスト&スロー 上』P.131(早川書房、2012)
著者:ダニエル・カーネマン、 訳者:村井章子
自信は感覚であり、自信があるのは、情報に整合性があって情報処理が認知的に容易であるからにすぎない。必要なのは、不確実性の存在を認め、重大に受け止めることである。自信を高らかに表明するのは、頭の中でつじつまの合うストーリーを作りました、と宣言するのと同じことであって、そのストーリーが真実だということにはならない。 『ファスト&スロー 上』P.309(早川書房、2012)
著者:ダニエル・カーネマン、 訳者:村井章子

ファスト&スロー(上) あなたの意思はどのように決まるか? (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)
日常生活にも通じる認知・直感・判断などの興味深い実験・エピソードが豊富で、どなたにもオススメできます。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。